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この週末は関西の「まけないぞう」仲間たちが、丹波や福知山の水害のボランティアに動いている。自分が動けなくて、本当に心苦しい。
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3年前、兵庫県の佐用町の水害現場に入ったのだが、もう見るもの聞くもの全て未知の世界だった。山の保水能力低下は、この国の森林国土計画の甘さ・木材の国際価格低下・高度成長期の都市の工業化・林業の衰退・林間地権者の管理放棄・森林組合の衰退・急速なる人口の高齢化・限界集落化・そこに異常気象と幾重にもトリガーが有ったのに、水害が起こるまで勉強不足だった自分を恥じた。
ひとたび水害が起こると、長期に渡っての公共工事を要する訳で、だったら森林組合の立て直しを地域の雇用に結びつけて、村おこしをやったらええやん、とか思うのだが現実はそう甘くない。
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今回の広島は、そこに正に「まさ土」があって以前から危険地域として認識されていたのだが、考えてみればそんな所は全国に数え切れないほどある。神戸だって生駒山の裾だってそうだ。
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では、東京はどうか。従前から首都直下地震があれば、木密地域(木造住宅密集地域)である墨田区・江戸川区・渋谷区・中野区・世田谷区などには消防車が入れない地域の、大規模な延焼が起こる事は、国も都も地域の住民も想定している。けれども、一朝一夕には事は解決はしない。
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もう一点、大事な事なのだが、海抜ゼロメートル地帯にマンションが林立している江東区の豊洲や有明なども、実は大きなリスクが潜んでいる地域なのだ。
豊洲や有明のマンションは、団塊ジュニアの世代がガッシリとローンを組んで住居としている。次の東京を襲う大震災時に、これらのマンション群がどうなるのか、世界的にひっそりと注目をされている地域なのだ。もっぱら大規模な液状化に耐えることができるのか、という視点による。しかしながら、災害社会学的に最も大事な視点は、もし耐えられなければ、この地域に住む人々は地震の発生とともに二重ローンの生活が待っている、ということだ。
こうしたことは、どういう訳だか誰も指摘しない。つまり、それこそが、大問題なのだ。
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2011年3月11日の福島原発事故から、3年半が経った。この間、被災者の最も不安である事柄は「健康被害」についてである。
この3年半の被ばく検診の実態を紹介し、今後長らくつき合わざるを得ない低線量被ばく時代の「被ばく健診」のあり方について考えてみたい。
この間、事故による「被ばく検診」は福島復興再生特別措置法(以下は福島特措法)によって、福島県民にのみ以下が実行されている。これは「基本調査」「甲状腺検査」「健康診査」の3部門からなっている。
「基本調査」は全県民を対象に初期被ばくの時期には何処に居たのかという実態を調べたアンケート調査である。
「甲状腺検査」は2011年3月11日に0から18歳までの全県民36万人を対象に甲状腺の視診・触診・エコーが行われている。ここで結節性病変が認められた場合には福島県立医大に於いて二次検査(詳細なエコー・採血・尿検査・細胞診)が行われる。
「健康診査」は避難地域住人(田村市・南相馬市・川俣町・広野町・楢葉町・富岡町・川内村・大熊町・双葉町・浪江町・葛尾村・飯舘村・伊達市の一部)の全てと「基本調査」で外部被ばく量が高かった者にだけ行われている。
ここで注目すべきなのは、浜通りの13町村以外の県民に対しては、既存の健診(労働安全衛生法に基づく定期健康診断、学校保健法に基づく健康診断など)をする際に、希望者には血液検査を行っているという事実である。この検査の対象数は40万人ほど。
通常、放射線障害で最も検査に反映するのは、白血球であるので、白血球分画は必須と考えるが、実は13町村以外の地域では検査がなされていない。
この事故に因って、被ばくが疑われている地域の人々には等しく、せめて白血球分画の検査は、定期的に行うべきであろう。ましてや、福島特措法ではその対象者は、「福島県民」に限られているのが現状なのである。
3月11日の原発事故による放射線汚染は、福島県のみならず広い範囲に拡散してしまい、栃木県北部・茨城県・群馬県などの北関東地位域や千葉県から東京都の一部の東葛地域、宮城県の一部も高濃度汚染地域になってしまった。
ところが、これらの地域では、3年半経った今でも何らの被ばく検診は実施されていない。
心配した母子が自発的に検診を行っているのが実情である。
現在日本では、世界で有数の国民皆保険制度が稼働しているといわれている。また、年齢により各種の健診制度が稼働している。例えば、母子保健法によって実施されている乳幼児検診、学校保険安全法によって実施されている学校検診、40歳以上には健康保険法で実施されているいわゆる「メタボ検診」などの現行制度が稼働している。
これだけの大規模な放射線汚染が起こってしまった現在、本来であれば広島・長崎での「原爆手帳制度」のような、国費による新しい検診制度を創設するべきであると筆者は思うのだが、第一に未だ低線量被ばくの健康被害の実態が不明な点が多く、それ故に因果関係の有無について全く議論が進んでいない。第二には少子高齢化により、ここ20年ほどで健康保険制度の疲弊が厳しく、また医療費により国家財政の逼迫されているのが現実的である。このままでは、被ばく健診・被ばく医療の新しい制度を創設して動かすには大変な時間がかかり、持続的な健診を続けてゆくのは困難では無いかと思われる。そこで、健康保険法の小規模改定などにより、現行の健診制度を利用しての「被ばく健診」を、可及的速やかに実現することができないだろうか?
現在最も大規模に行われているのが、前述した成人のいわゆる「メタボ健診」である。これは20年度から始まった検診であるが、被保険者がそれぞれに属している各種の社会保険や組合保険・国民健康保険などを全て横断して、それぞれの職場の健診などに組み込んで、健康保険法に基づいて生活習慣病の検査を行いこれを厚労省が直接管理している。
この「メタボ健診」方式で、学校検診や乳幼児健診に白血球分画を含む血液検査を追加できないだろうか。
いま学校検診では小中学9年間に2回の心電図健診が実施されているが、セシウムは心筋に沈着することがよく知られているので、学校健診の心電図のデータの活用も有意義に使いたいものである。
原発事故から3年半が経ったが、健康被害の話題は専ら甲状腺癌に収斂され、その他の健康被害を完全に黙殺するような異常な社会状況にある。
しかし子どもたちの異常の報告は数多くあり、私たち臨床医は低線量被ばくによる健康被害について、今後も注意深く診てゆく必要があるだろう。
チェルノブイリの事故の後、ソ連の隠蔽工作に異議申し立てをして、子ども達の健康被害を真っ先に告発したのは、ウクライナやロシアの女性医師たちであった。その先達の勇気に敬意を表しながら、ここに新たな「被ばく健診」の提言をしたく思う。
8:00 30℃
虫の声する信濃の夜半よ
こんなに好きといっているのに
サイゴノタブーヤブリニユコウゼ
この度の広島市の土砂災害はたいへん大きな規模になってしまった。
先日の福知山市と丹波ささやまの水害には、「被災者生活再建支援法」の適応が決まっている。広島市にも当然ながら適応になるだろうが、これらの法律の、その立法の経緯を改めてしみじみと考える夜だ。
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「被災者生活再建支援法」とは、阪神・淡路大震災が起こるまでは、個人の私有財産に対しての保障は行わないという国是(戦後は特に持ち家制度であったため)であったのだが、余りにも甚大な住宅倒壊の被害が出たため、兵庫県を中心に小田実氏や伊賀興一氏などが中心になって大きな住民運動が起き、2400万人の署名が集まり議員立法が成されたのだった。
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わたしの関西学院大学の災害復興制度研究所のボス・山中茂樹氏は、この震災の当時、朝日新聞のデスクだったそうだが、日々記事を送り出す中で、「住宅を失った人々の生活は新聞記事では救えない」と考え、研究者への道に入ったという。小田氏らの運動を支えた一人だ。
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さて、この自然災害が多発する国に暮らしていて、今は未知の戦争被害にまで考慮しなくてはならなくなってしまった。それを決めた国の執行部は、この国の災害史をどれくらい知っているのだろう。
中国の軍よりも何よりも、この国が一番に用心しなくてはならないことは、自然の力なのではないか。
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そこで、いつもわたしは立ち止まってしまうのだ。たった今、自分は何をすればいいのだろうか。
東日本大震災での福島第一原発事故を目の当たりにして、「医療だけでは人を救えない」と、わたしはずっと思ってきた。
尊い命と尊厳ある暮らしを守る為には、しっかりとした理念に裏打ちされた建付けのいい使い勝手のいい法律が必要なのだ、と、心からそう思う。
立法の頭のある人々に、そこをもっと考えて欲しいのだ。戦争法案などではなくて!
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