ドクター青木のぞうさん日記

makenaizone主宰の青木正美が、自分の生活の中でできるボランティアとは何かを考え、実行してみよう、そんな四方山話を綴ります。
Dr Aoki's Prescription...

2013.8.9

2013年8月9日 金曜日

 日本政府に、被爆国としての原点に返ることを求めます。
 今年4月、ジュネーブで開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議準備委員会で提出された核兵器の非人道性を訴える共同声明に、80か国が賛同しました。南アフリカなどの提案国は、わが国にも賛同の署名を求めました。
 しかし、日本政府は署名せず、世界の期待を裏切りました。人類はいかなる状況においても核兵器を使うべきではない、という文言が受け入れられないとすれば、核兵器の使用を状況によっては認めるという姿勢を日本政府は示したことになります。これは二度と、世界の誰にも被爆の経験をさせないという、被爆国としての原点に反します。
 インドとの原子力協定交渉の再開についても同じです。
 NPTに加盟せず核保有したインドへの原子力協力は、核兵器保有国をこれ以上増やさないためのルールを定めたNPTを形骸化することになります。NPTを脱退して核保有をめざす北朝鮮などの動きを正当化する口実を与え、朝鮮半島の非核化の妨げにもなります。
 日本政府には、被爆国としての原点に返ることを求めます。
  非核三原則の法制化への取り組み、北東アジア非核兵器地帯検討の呼びかけなど、被爆国としてのリーダーシップを具体的な行動に移すことを求めます。                    長崎平和宣言より

全文はこちらから
http://www.city.nagasaki.lg.jp/peace/japanese/appeal/

抜粋した部分だけではなく、長崎の田上市長の長崎平和宣言は、胸に突き刺ささるスピーチだった。
1945年に落とされた2つの原爆に因っても、2011年に起こった原発事故に因っても、わたしたちの国は大きく傷ついた。この地球上のあらゆる国のあらゆる人々の記憶の中に、ヒロシマやナガサキやフクシマが宿っていることだろう。

そんな国である日本が、NPTの「核の不使用」共同声明に署名しなかった事は、本当に間違った行き過ぎた対米追従であり、恥ずべき判断だったとわたしも思う。
田上市長が平和宣言で表したことこそ、真の人権とは何かを問うたものだ。

人類は時に沢山の過ちを犯すのだ。誤ったら正す。正しても誤る、また正す。そうして進んでゆくより他にない。
こんなに簡単な「絶対悪」が認められないようでは、この国に未来は絶対にないはずだ。田上市長のスピーチを、しっかり受け止める社会にしてゆかなくてはならないと、改めて心に誓う晩だ。
8:9


S88.8.8

2013年8月8日 木曜日

最後の新患の予診を取り始めたところで、緊急地震速報が鳴った。
診察を中断して、メール確認とTwitterにアクセス。続いてスタッフに指示を出して、radikoを立ち上げてみるも、地震の知らせは入ってこない。ホッ!

「奈良 M7.8 震度7」と出た時には、正直、色々な事が頭を駆け巡った。
駆け巡ったことを、ここに全て書き出す事ができない程に。

日本には英雄が描かれてきた所謂「歴史」の他に、「災害史」というものがある。
正確に言えば、災害の歴史があって、その上に時の運を見方につけた英雄が登場してくると言った方が正しいだろう。

奈良の大仏はなぜ作られたのかを知れば、その時代に今の近畿地方は絶え間ない災害に襲われていたことが分かる。
大仏は失われた命に対しての鎮魂の意味合いと、生活の糧を無くした人々を救う公共事業の意味があって建立されたものだ。

奈良とはそういう土地であって、つまり末代まで語り次がれるような大地震が起こった場所であったのだ。
緊急地震速報の音を聴いたとたん、なぜか聖武天皇の気持ちが少しだけわかった気がしたのだった。

さて、今日の緊急地震速報だが、これで良いと思う。
ドンマイドンマイ、見逃しよりも、空振りでいい。
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2013.8.7

夕方から、日弁連の『ウクライナ現地調査報告会』。
ウクライナ旅行の懐かしいメンバーの発表を聞きながら、また今中哲二氏の発表を聞きながら、この2ヶ月半の間のことを考えていた。

昨秋から本格的に福島の事故と関わりを深くするうち、色々な人々と出会い、ウクライナにも行き、進めば進むほど正直、分からなくなってくるのが低線量被ばくを取り巻く実態だったりもする。

人類最古の病は、ドイツで見つかった9000年前の骨に脊椎カリエスの痕跡があったということから結核と認識されているが、結核が「死の病」のリストから外れたのは、ストレプトマイシンが発見された1944年以降であり、まだほんの70年程しか経っていない。
そういう意味で放射線障害による病の歴史は、まだまだ本当に浅く始まったばかりだ。
早急に根本的な解決策が見えるとは思えない、と理解して前に進むしかない事も多々あるのことだろう。

報告会が終わって、弁護士会館の地下でお疲れさま会。青木秀樹弁護士や海渡雄一弁護士・小林玲子弁護士としみじみ、今のこの場面で弁護士と医師が両輪になって福島問題を考える部会が必要だという話しをば。
この10月の人権大会@広島で、何とか発足できないものか早急に検討しないとなぁ。

医療とは、患者さんが先にあって、後を追ってゆくものだ。法律は、できれば患者さんの先にあって欲しいものだ。双方の世界が出来る限り緊密に風通しよくつき合ってゆければ、どんなにいいかなぁ、と。
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2013.8.6

2013年8月6日 火曜日

「世界の為政者の皆さん、いつまで、疑心暗鬼に陥っているのですか。威嚇によって国の安全を守り続けることができると思っているのですか。広島を訪れ、被爆者の思いに接し、過去にとらわれず人類の未来を見据えて、信頼と対話に基づく安全保障体制への転換を決断すべきではないですか。」
広島の松井市長は、2013年の平和宣言でこう呼びかけた。

核を持っているか否かの、覇権主義はもうやめよう。とことん対話をして、絶対に人を殺さないで話し合う。戦争経済で回っている今のシステムを改めよう。
きっと、地球にはそう思っている人々が沢山居るに違いない。時間はかかるかもしれないが、核など要らないじゃないか、人間には「言葉」という道具があるじゃないか、和を持とうという知恵があるではないか。
もうそろそろ、人類は本気で考えなくてはならないはずだ。

核は誰一人として、幸せになどしてこなかったではないか。核を持つ国も持たざる国も、実はその工場である原発が動いている限り、核による汚染は避けられないできたのではないか。
時に人為的なミステイクによって、時に大自然の猛威によって、核は人間が全くコントロールが効かない状況になってしまって、そこで暮らす人々にどん底の苦しみをもたらすではないか。

これほどまでに核によって苦しんだ日本の人々は、もう止めて欲しいと願って止まない人々が、どれだけいることだろうか。それでも、これまで培ってきてしまった経済システムで、どうしても「降りられない人々」が居るならば、みんなで知恵を出し合って、一人の脱落者を出す事無く、戦争経済システムを変えてゆこうではないか……これは三宅洋平が言っていた言葉だ。本当にその通りだ。崇高にわたしたちが希求しなければ、決して実現しないだろうが、希求し続ければきっと願いは叶う事だろう。

多くの人々が心から真剣に平和を求めたとき、きっと新しいパラダイムがまわり始めることだろう。しかし多くの人々が心からそう希求するようになるためには、まず貧困状況をなくさねばならないのだけれども。未来の平和より明日の脱原発より、今夜のパンが大事になってしまうわないように……。
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2013.8.5

2013年8月5日 月曜日

今朝の朝日新聞、福島第一原発で働いていた原発作業員のうち、事故から9ヶ月間での作業で10000人もの人々が、白血病の労災認定基準である年間5ミリシーベルトの値をオーバーしていたことが分かった。

つまり、事故から今日現在で29ヶ月経っている訳なのだが、初頭の9ヶ月だけで10000人が、いつ白血病を起こしても不思議ではなく、もし白血病になれば事故処理との因果関係があるので、労働基準法に則り「労災認定」がなされる値の放射線を浴びたということなのだ。

わたしは、痛みの専門の医者として、労働基準法に則った「労働災害」による痛みを拝診することも多々ある。
痛みの場合、骨折とか四肢の切断とかのように、客観的な診断が容易ではないので、因果関係が証明出来ないとして、しばしば労災認定が降りないことがある。

労働基準法に則った労災認定というのは、それほどまでに「労働」と「疾病」の間に確固たる因果関係の証明が求められるものなのだ。

だからこそ、この年間5ミリシーベルトを10000人もオーバーしているという報道に、わたしはたいへん驚いたのだった。

もう一度言おう。労働基準監督署が規定している白血病のデッドラインを超えている作業員が、初頭の9ヶ月だけで10000人も出ているという厳然たる事実が、今頃リークされたということは、何を意味するのだろうか。

もう隠し通すことができないほどの人々の血液に、何らかの変化が起こっているということなのだろうか。

ともあれ、これから何十年も何百年も作業は続くのだ。
労働基準法の名に於いて、しっかりと原発労働者の健康とひいては人権を、しっかりと把握して守っていかなくてはならない。一刻も早く、このブラックボックスの中身を透明にしてゆかねばならない。
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