2014.9.29

2014年9月29日 月曜日

新聞やテレビのメディアが余りにも不勉強不見識なので、今まで分かっている知見から今回の御嶽山の噴火について記す。
自分も何ぶん完全なる門外漢なれど、マスコミが余りにも酷い不勉強なので、このままでは第二第三の噴火が見逃されることになると思って筆を、否キーボードを叩いている。

まず、日本列島付近には110もの火山がある。その火山はすべて、プレート境界に沿って存在する。なぜならばプレートの沈み込み運動に因って出来たマグマを排出する口が、火山口であるからだ。(火山の成り立ちにはプレートと無関係で、地球の核からマントルを溶かしながら上がってくるマグマを排出する火山もあるが、今回は長くなるので省く)
一昔前までは、プレート境界型地震と火山活動の関連については、まだまだ解明に至っておらず、しばしば地震と火山の関係性が不明な時代が長くあった。それで、日本列島の火山は、7つに分類されてきたのだったが、現在ではプレートテクトニクスに因って火山運動も解明されつつある。

日本列島は陸のプレートの下に海のプレートが沈み込む「沈み込み帯」という場所に位置する。「沈み込み帯」での火山の最大の特徴は、プレート運動に因って常にマグマが供給されているということである。

プレート境界でのマグマの形成過程はこうだ。
プレート境界の深い場所では、プレートの沈み込む摩擦に因って高温高圧になっている。殊に地下100kmの所では、沈み込む海のプレートから水が浸み出てきて陸のプレートのマントルと反応し、水がマントルを溶かしてマグマを形成する。
プレート境界の地下100kmでは、1200℃、3万気圧もの負荷がプレート境界に掛かっている。この高温高圧により、海のプレート由来の水が陸のプレートのマントルを溶かして、マグマが作られる。

このマグマは、地表近くまで上がってゆき、やがてマグマ溜まりができるのだ。だが普段はプレート境界で陸のプレートと海のプレートが拮抗して高い圧がかかっているうちは、そう頻繁にはマグマは排出されない。つまり大きな噴火はしない。しかしプレート境界型の地震が起こって、陸のプレートへかかる圧が弱くなったときにマグマは地表に出易くなる。つまり噴火を起こす。それが火山噴火のメカニズムである。
日本列島の周囲でプレートの沈み込みに因って生産されるマグマは、実に年間11億トンにもなるという。

プレート境界で形成されたマグマは、その形成過程から元々多量の水分を含んでいる。これが地表近くに出て来た時、水の分子が気化する事に因って、体積が1000倍以上になる。従って、プレート境界で起こる火山噴火は大規模な火砕流など、爆発的になる事が多い。アイスランドやインドネシアの火山噴火とともに、日本列島もその例である。

つまり、プレート境界では常に水分を沢山含んだマグマが形成されており、プレート境界では時々、地震が起こってきたのだ。そうして地震の後には、マグマの噴火がある。これはプレートのメカニズムからして、至極当然な一連の流れと考えてよいだろう。

2011年の東日本大震災では、マグニチュード9という人類史上最大級の地震が起きた。
人類の歴史上現在まで、M9の地震は4回あり、その全てはプレート境界型地震であり、その3回まではその後に火山噴火が観測されている。たった一回の例外とされて、その後に火山噴火を見なかったのが東日本大震災だった。
もう一度記す。これまで人類史上、M9の地震が起こって、その後に火山噴火を伴わなかったのは東日本大震災だけだったのである。従って311の後、火山と地震の専門家は、大規模な火山噴火を今か今かと固唾を飲んで待っていたはずだ。

プレート境界で起こる地震は、沈み込む海のプレートがもうこれ以上沈み込めなくなってリバウンドを起こした時に発生する。するとそれまでプレート間で大きく圧が掛かりながらマグマが押さえられていたのだが、プレートの沈み込む圧が急に減じることによって、陸のプレートの中でマグマが押さえきれなくなり、マグマはかなり地表近くにまで上がってきているはずだった。つまり、火山の場所はともかくとして、東日本火山帯の火山が噴火するのは時間の問題だった訳だ。

日本列島にある火山帯は、プレートテクトニクスが解明されてからは、以前とは全く違う分類がなされていることは前述した。(とはいえ、門外漢の青木がら言わせれば、まだまだ分類も途上なのだろうか。不明な点が多々あるのだが)

北米プレートに太平洋プレートが沈み込む「沈み込み帯」に属する【東日本火山帯】と、ユーラシアプレート(一部アムールプレート?)にフィリピン海プレートが沈み込む【西日本火山帯】。今は東日本火山帯に属しているのだろうか?太平洋の小笠原あたり、つまり、ここは変則的ながら海のプレート同士がぶつかっている場所で、フィリピン海プレートに太平洋プレートが沈み込む、【旧富士火山帯】に分けることができる。

今回の御嶽山は、東日本火山帯の最も西の果てに位置する火山なのだ。
つまり、3年半前の東日本大震災によって、大きくプレート間の圧力のバランスが変化した日本列島では、東日本に位置する火山は、それまでに溜まりに溜まったマグマへの圧が減じて、吹き出す口を探していたはずなのであった。
だから、浅間山が噴火しようとも、岩城山が噴火しようとも、岩手山が噴火しようとも、磐梯山が噴火しようとも、鳥海山が噴火しようとも、東日本火山帯に属する火山ならどこが噴火しようともよかったのだ。もちろん、御嶽山は大本命中の本命候補だった。

さて、本稿の一番始めに書いたように、火山帯の分類は昔と変わっている。昔は富士火山帯とか那須火山帯とか言っていたものだが、近年、プレートテクトニクスの解明が進んで、沈み込み帯周辺の地震と火山の関係について研究が進んだからだ。

だからこそ、今回の御嶽山の噴火は「予兆がなかった」と気象庁は言っているが、火山性の地震や低周波地震があったと発表されているのだ。それは立派な「予兆である」。それを予兆と言わないなら、何をもって予兆というのだろうか。ふざけるな。
予兆は小さく短かったにしろ、あったことはあったのだ。
火山予知連絡会やら何やらが、どんな言い訳をしようとも、それは揺るぎようもない事実である。

すると、この度の噴火に因る死者は、人災だったのではないのか。M9のプレート境界型地震の後に起こるべくして起こるはずの火山活動を、この国の専門家が過小評価したことに因って起こった、世にも見事な人災ではなかったのか。
もしも東日本火山帯に属する火山に、もう少し世間の関心があれば、もう少しマンパワーがあれば、南海トラフ地震に対する予算の1/1000でも付いていたら、こんなことにはなってはいまい。

快晴の紅葉の候の休日の昼に起こってしまった噴火であったので、早朝に登山を開始した登山客が山頂でお昼を食べる時間であった。リュックの口は緩めて、気も緩んでいたに違いない。
もしも噴火が午後3時なら、登山客は大方下山していて、死者は激減していたに違いない。


日本の国土は、地球上のたった0.25%に過ぎない。そこに地球上で起こるM5以上の地震の25%が集中し、地球上の火山の7%が存在する。

いま現に、地震の活動期に入った日本は、同時に火山の活動期にも入ったと言っても過言ではないのだ。
つまり、これからも同じように東日本火山帯に属している火山では、プレートの圧が緩んだがために、マグマが上昇してきているのであるからして、必ずやこれからも火山噴火が起こるはすである。
もちろん、全く同じ理由によって西日本火山帯の火山噴火が南海トラフ地震と連動して起こる事は充分考えておかねばならないのだが。

何にせよ火山噴火の本当の意味を、もっとしっかりとした学問的な知見から、マスコミは論じるべきなのである。


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