みなさんには、少し馴染みのない言葉かもしれません。けれども、人が生きてゆく時、その人生の中で何度か(少ない人でも2~3度。多い人では10度ほど)、理屈では到底説明のつかない状況に陥ってしまうことが侭あります。
他者にも自分にも合理的な説明ができないが、どうしても他者を好きになってしまう……この状況を「恋に落ちる」といいます。
2011年5月中旬、わたしのクリニックでは「ぞうに落ちる」という人々が多数出現しました。
そうです、まるで恋に落ちるように、まけないぞうに落ちてしまったのです。かくゆうわたしもその一人で、わたしには光の道しるべまで見えてしまったことは、前回お話し致しました。
そうして、この症状が最も早期に最も顕著に現れた人が、笙演奏家の宮田まゆみさんでした。宮田さんといえば言わずと知れた世界的に有名な、あの宮田まゆみさんです。宮田さんが「ぞうに落ちた」瞬間のことは、わたしはよく覚えています。宮田さんは15年もの間、仙台の大崎八幡宮で夏に執り行われる「御鎮座記念祭」で伶楽舎の方々や大崎さまの巫女さんたちと、雅楽と舞いを奉納されています。それで毎年、梅雨近くになるとお祭りの稽古をしに、月に何度も仙台を行ったり来たりの生活になるのです。
わたしの『makenaizone備忘録 2011.5.21』によると、5月21日に宮田さんが見えた時にはすでに、「まけないぞう」と「御鎮座記念祭」のコラボレーションを熱心に考えておいででした。
翌週には「御鎮座記念祭」とのコラボはもちろんのこと、それとは別に鎮魂コンサートの実現にむけて走り出しておられました。
もう、こうなったら誰にも止めることなどできやしません。ご本人には確かめていませんが、わたしに見えたあの光の道しるべが、きっと宮田さんにも見えちゃったのではないかと思うのです。
そうですそうです、「ぞうに落ちた」のです。
それで、そこから芝祐靖先生や伶楽舎の方々や、もちろん大崎八幡宮の小野目宮司さまを口説いて口説き倒してタオルも超沢山集めてくださるわ、ああだわこうだわ動いて動いて動き回ってくださり、なんと全ての出演者の協力を仰いで『雅楽の夕に、』という超豪華メンバーによる雅楽のコンサート&トークショー&まけないぞうのワークショップ&まけないぞう500頭販売まで実現する運びとなったのでした。
ですから『雅楽の夕に、』を実現するためには、途方もなく大きなエネルギーが注ぎ込まれた訳ですが、それでもって多大なる手間と時間が宮田さんのただでさえ忙しい時間をじわじわ奪ったに違いないのですが……。
ところが、ご本人はつい最近、大崎八幡宮に到着した500頭のまけないぞう達と対面したとたん、そんな苦労や疲れもすっかり吹っ飛んじゃったのでありました。そんなご様子に、わたしは内心ホッとするやら可笑しいやら。
そんなこんなで、震災直後には、まだまだ遠い先の話であった「御鎮座記念祭」と『雅楽の夕に、』がいよいよ今日から始まるというわくわくした朝を迎えているところであります。
午後一番の新幹線で「ぞうに落ちた」「makenaizone」のメンバーとともに、一路、仙台へと向かいます!