先週、南海トラフで将来的に起こるであろう、東海・東南海・南海地震が3連動で起こった場合の「被害想定」が発表された。
「最悪の場合の死者は32万人」という、一見、ショッキングな内容にマスコミは湧いた。
そこで内閣府の防災のwebページを見に行ってみたのだが予想以上にアクセスが多いのだろう、重くて重くてページが見えなかった。今日になってようやく議事内容の閲覧できるようになったので、見に行ってみた。
確かに、東海・東南海・南海地震がほぼ同時に起これば(実際、約300年前の宝永、150年前の安政では3連続で起こっている)房総半島から日向灘、場合によっては宮古島まで大津波に教われ、大きな被害が出る事は随分以前から指摘をされている。
東南海・南海地震というのは、日本の有史上もっとも有名な地震であり、その発災の規則性や江戸時代以降は政治経済の要が壊滅的な被災するということもあって、注目度の最も高い地震であり続けている。
東海・東南海・南海地震を起こす南海トラフ地震(8月29日からこの名称で呼ばれることとなった)の被災域には、日本の総人口の51%が住んでおり、3大首都圏がスッポリと入ってしまうことから、発災が最も懸念されている地震であることは、今も昔も変わりは無い。
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けれども、2011年3月11日の東日本大震災を経験したこの国に於いては、今回のワーキンググループの出した被害想定には、大きく欠落したものがあると感じているのは私だけではないだろう。
そう、そこには中部電力浜岡原子力発電所の被害想定が全く欠落していて、被害想定に反映されていないのだ。
ワーキンググループは計7回の会議が持たれており、うち議事内容は1回から6回までしか公開されていないので、もしかすると7回目で原発震災の話が出てきたのかもしれないが、少なくとも6回の議事の要点には一度も言及がされた形跡がない。
浜岡原発の3〜5号機は2011年5月9日に当時の菅直人総理大臣が緊急停止命令を出したまま、現在も運転は止まってはいるものの、予想される東海地震の震源断層面の直上にある、世界で最も危険な原発であることには今も全く変わりがない。(1、2号機は廃炉にむけ既に運転を停止している)
現在3〜5号機には、未だ燃料棒が入ったまま制御棒が差し込まれている状態で、燃料プールにも沢山の使用済み燃料棒が入ったままになっている。
3〜5号機の原子炉には合わせて2400本の燃料棒が、3〜5号機の燃料プールには6625本の使用済み燃料棒が存在している。
昨年5月に5号機の原子炉に海水が混入した事故があり、最近ではタービン建屋周辺に放射性物質を含んだ水が漏れ出すということが報道されている。
そもそも中部電力浜岡原発は、国内で唯一、敷地内で専用港を持たない原発なのだそうだ。それゆえ、冷却のための海水は、原子炉の600m沖合の海水取水口(取水塔)までトンネルを掘って海水を取り込むような特殊な冷却系統になっている。
原子力安全基盤機構からは2009年には既に、津波に襲われて取水塔が破損されたり塞がったりすれば、炉心損傷に至る可能性があるという大きなリスクを指摘がされているのが、浜岡原発なのである。
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さて、南海トラフ地震の最東端は「東海地震」の震源域である。
東海地震の震源域のド真上に位置する浜岡原発の周囲は、東海地震によって地盤が4mほど隆起する可能性が高いとされている。
つまり、東海地震が起これば浜岡原発の周囲の地盤が隆起して、地震動そのものに因って原子炉周辺の諸々の配管や、冷却水の取水口から続くトンネルが断裂を起こさないという保障は一つもない。さらにその後に巨大な津波が来ることになる。
そうして考えれば考えるほど、浜岡原発の危険性が目前に迫っているように思うのだ。
もちろん、南海トラフ地震が近くなれば、内陸の活断層への圧力も活発化し、若狭湾周辺の地震が増えて他の原発事故が起こらないとは限らない。
が、東海地震の震源の真上に位置する浜岡原発こそは、今のままでは東海地震発生と同時に必ずやシビアアクシデントが起こってしまう可能性が極めて高いのではないだろうか。
ワーキンググループの専門家の方々もそれは重々承知しておられるはずだと思うのだ。
たった今、私たち日本に住む者が、誰一人としてこの問題から目を逸らしている訳にはいかないのではないか。
もしも、たった今、私たちが目撃している「東日本大震災による福島第一原発の事故」と同様の規模の事故が、浜岡原発で起これば、その瞬間にこの国の繁栄は終焉を迎えるだろう。
そうならない為に、この国で関心を持っている人たちが、あらゆる専門の領域を超えて、立場を超えて、何とかしようという固い決心をする必要がある。
今なら、まだ、間に合うのだから。